2026/07/11 18:38

第7話 プロジェクトと千載一遇の恋
プロジェクトの企画担当を、A君と二人でやることになった。
正直、あまりうれしくなかった。
というより、彼主導で物事が進んでいく感じが、どうにも気に食わなかった。
テーマを決める打ち合わせでも、彼は迷いなく意見を出してくる。
私はつい、投げやりな態度で言ってしまった。
「もう、勝手に決めて!」
彼は少しだけ躊躇したあと、
「じゃあ、これで行きます!」
と、軽々しくまとめてしまった。
まったく。
私のことなんて、眼中にないみたい。
その態度が、どうにも我慢できなかった。
でも、よく考えれば、彼のまとめた案の中には私の意見も
三割くらいはちゃんと入っていた。
完全に無視されているわけではない。
それでも、彼のやり方は少し強引で、悔しくて、腹が立った。
けれど、発表の日。
その印象は、少しだけ揺らいだ。
皆の前で彼は、まっすぐに言った。
「この企画は、洋子さんの意見を中心に考えました。とても素晴らしい意見で、僕はぜひこれで進めたいと
思っています。」
……え?
ほとんど君じゃないの?
私の意見、そんなふうに言ってくれるの?
二人きりの時は強引なくせに、
みんなの前では、ちゃんと私を立ててくれる。
そのことが、妙に心に残った。
少し強引で、大切なところはかなり緻密に計算してくる。
でも全体では、ちゃんと相手を尊重してくれる。
本当は、なんて心の優しい人なんだろう。
気がつけば、私は打ち合わせの最中も、ぼんやり彼を見ていた。
「洋子ちゃん、どうした? さっきからぼーっとしてるよ。」
その声にはっとして、私は慌てて目をそらした。
顔が熱い。
こんなの、私らしくない。
家に帰ると、早速いつものMy Personal Space に入った。
だけど最近は、そこで顔をうずめるたび、彼の姿が浮かんでしまう。
無撚糸タオルのやわらかさに包まれて、しばらく静かにしていると、
やっぱり今日も、彼の顔が思い出された。
彼は、このMy Personal Spaceの無撚糸タオル
に少し似ていると思った。
少しあわてんぼうでおっちょこちょいな私をそっと
受け止め、やさしく包んでくれる。そして本来の私にしてくれる。
今の私は、My Personal Space が彼のところに移転中らしい。
そう思うと、少しおかしくて、少し切なくて、でも悪くない気がした。
それもまた、大切な経験。
私はそんなことを考えながら、明日が来るのが楽しみで仕方なかった。
「お願い、ずっと続いて……」
心の中でそうつぶやきながら、
洋子は深い眠りについていった。
